CancerXでは2つの視点で食と栄養を考えている。
1つは生きるための食、もう1つは楽しむための食である。前者は生きるための必要な栄養を摂取する考え方であり、後者は品質や栄養成分ではなく、誰と食べるかやどこで食べるか、何を食べるかという考え方である。
【WCW2022の振り返り】
1.がんを予防できる、がんに効くなどの情報が溢れているが、実際にそのような食事はあるのか。がんによる栄養障害は2つある。1つは、がんそのものによる「栄養の利用障害」、2つ目は、がんにより誘発される「栄養の摂取不足」である。さらに、②の原因には、がんに直接関連する内容に加え“情報過多”があると言う。医師の科学的根拠がある視点だと、食事で禁止するものはないと荒金氏は述べている。さらに、食事を禁止をするとなると、患者の生活を変えることを強いる可能性があると加えた。
2.自分が楽しむための食とは何か 生きるための食と楽しむための食と分けて考えるのではなく、がん患者は何を食べても良いという話があるなら「生きるための食=楽しむための食」なのではないかと磯野氏は語っている。
3.正しい情報はあるのか 正しいを判断するには、その人がどう生きたいか、何が欲しいか、何が手に入るかなどがすべて関わってくる。ゆえに、その人にとっての正しいも日々変わっている。治療と向き合いながら、その時々で話し合い、自分の中の正しいを見つけ、それぞれの正しいを決めていくことが重要である。 がん治療中の食においては、身体が喜ぶ選択をすることも正しいことの1つ。
【WCW2023のディスカッションポイント】
WCW2022では、がんの食事に関して、がんと食と栄養に関しての因果関係を証明することが難しいという結論になった。
また、がんの食事に関して禁止するものはないという医師からの新しい視点も得られた。
さらに、科学的根拠に基づいた正しい情報も大事だが、大切なのはその人がどう生きたいかであり、その正しさを知るためには、治療と向き合いながら、対話を繰り返していくことが必要であるという話でセッションが終わった。
興味深かったのは、人と人を繋ぐのが食ではないかという問いが出たことである。
そこでWCW2023では、医療者と患者や家族の対話(コミュニケーション)のツールとしての食という視点で話を展開していく。また、改めて、がんと食と栄養の因果関係に触れ、治療中の食における制吐剤などの効果を検討しつつ、「生きるための食」や「楽しむための食」とは何だろうかを、登壇者や参加者同士で対話できる場にし、皆さんが考えるがんと食と栄養の境界線上にある価値を受け容れ合えるセッションにしたい。
キーワード:がんと食事、医療の不確実性、コミュニケーションとしての食
DAY 7
2/4 (土)
15:45 - 16:45
【CancerX 食と栄養】
協力セッション
~食が育むコミュニケーションの可能性~
- 犬飼 道雄 ( 岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター 主任医長 )
- 藤岡 聡子 (福祉環境設計士)
- 武田 絵里子 ( 一般社団法人 愛生会山科病院 緩和ケア認定看護師、NPO法人 京都ワーキングサバイバー スタッフ )
- モデレーター : 阿部 学 ( クリエーティブカミヤ株式会社 / 訪問看護ステーションカミヤ 主任 認定言語聴覚士(失語・高次脳機能障害 / 摂食・嚥下障害領域) / 一般財団法人 訪問リハビリテーション振興財団 研修班 副班長 / 一般社団法人 日本言語聴覚士協会 介護保険部 )
Cancer Agenda 06
がんになっても自分らしく人生を送ることをあたりまえにする
Cancer Agenda 12
患者力*が育つ環境をつくる
*自分の病気を医療者任せにせず、自分事として受け止め、いろいろな知識を習得したり、医療者と十分なコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、人生を前向きに生きようとする患者の姿勢(引用元:PEP(Patient Empowerment Program)。
Cancer Agenda 13
最適な医療を選択できるようにする
Cancer Agenda 14
患者のQOL*を重視した医療を提供する
*Quality of Life の略。ひとりひとりの生活の質のこと。
TAG